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東京野球ブックフェア2019に参加しました

 去る3月10日、東京はお茶の水の「御茶ノ水ソラシティプラザ」にて開催された、東京野球ブックフェア2019に代表の田中以下計3名のメンバーが参加してきました。

 同イベントへの参加は、世田谷ものづくり学校で開催された2016年の初参加以降4年連続(実行委員会のHPでは3回目と書かせていただきましたが、最初は田中が不在であったため正しくは4回目でした。失礼しました)。ソラシティプラザでの参加は2年連続で、参加したメンバーの顔触れも昨年度と同様でした。今回は、過去のイベントでもご一緒した複数の有名サークルが抽選漏れするなど、かなりの激戦区となった模様。そうした中で今年も参戦することができたのは、とても幸運かつ光栄なことでした。

 今年のイベントで私たちが懸念していたのが、寒さと来場者の集まり具合。昨年はシーズン開幕直前の時期に開催されたのですが、半屋外という立地を考慮しても非常に肌寒く、またイベント自体の活気も既に確固たるブランド価値を確立しているブックフェアにしては、失礼ながら若干寂しかったという印象を持っていました。そのため、同じ会場で開催される今回はその判断が吉と出るか凶と出るか、手探りの部分があったのは正直に申し上げて事実です。

 ところがふたを開けてみると、それは完全に杞憂に終わりました。当日は曇り空ではあったものの昨年と比べれば寒さは和らいでおり、ブースにいてもかなり過ごしやすい環境に。また2年連続で同じ場所にイベント会場をセットしたことで、一般参加者の方々もなじみ深く足を運びやすくなったような気がします。元々、ソラシティプラザはJRから徒歩1分、地下鉄からは直結と立地的には素晴らしい場所。今年はそのポテンシャルを十分に発揮し、勝手な想像ながら実行委員会の皆さんがこの場所でやりたかったであろうことがほぼできたんだろうな、と感じました。

 さて、今回の私たちのミッションはおなじみの欧州野球ガイドブックシリーズ「Basbalo」と、野球フィンランド代表応援グッズを会場にて販売すること。特に、今回は新刊となるフランス編「Basbalo Francaise(バスバーロ・フランセーズ)」が直前に何とか仕上がり、その本邦初公開が本イベントでの最大の売りとなりました。残念ながら、野球とソフトボールの事実上の落選が決まってしまった2024年パリ五輪ですが、そこに向けてのPRの意味も込めて制作を進めていた作品でもあったので、私たちとしては思い入れのある作品でもあります。

 他方、何部刷るのかについては慎重な判断を求められたのも事実でした。過去に参加した札幌や東京でのコミティアでは、最初に制作した「Basbalo入門編」や、昨年のオランダ視察を経てメンバーが制作した「欧州野球見聞録」といった、いわばビギナー向けの作品が手に取られることが多く、逆に各国の事情を掘り下げた国別編はなかなか数を捌くことができなかったためです。また、前年度での販売部数も期待通りとは言えず、そうした記憶もあってフランス編は10部限定にとどめるなど、印刷部数については慎重な路線で進めることとしました。

 結果的には、この判断は裏目に出ました―もちろんポジティブな意味でなのですが―。ブースのセッティングが終了して間もなく、本来のスタートタイムである11:00を回る少し前から、早くも参加者の方々がブースに足を止めるようになります。時間を追うごとにその回転はどんどん速くなり、新刊のフランス編はあっという間に売り切れに。続いてドイツ、イタリア編も相次いで完売しました。売り場に立っていたメンバーは、あまりの回転の速さに他のブースを回る余裕が皆無となり、ようやく昼ご飯のことを話し合い始めた時には、時刻は既に13時を回ろうとしていました。

 過去のイベントでは、売れ残ることの方が多かった国別編。それがまとめ買いでどんどん買われていくという想定外の事態に、私たちメンバーは嬉しい悲鳴を上げていました。買ってくださった皆さんの中には、ご家族の中にフランス語圏であるカナダ・ケベック出身者がいらっしゃる方、10年ほど前にチェコやスウェーデンに実際に国際大会を見に行かれた方、さらには準硬式の現役選手でドイツ球界への挑戦を目指しておられる方など、様々なバックグラウンドをお持ちの方々が。元々路線は各々違えど、筋金入りの野球狂ばかりが集まるイベントだということは十分理解していたはずなのですが…。このブックフェアのポテンシャルを少しばかり過小評価していたかもしれません。

 そのブースですが、今回は今までのようなデスクではなく過去に経験がないワゴンを使っての出展。ブース割り振りについては元々当日に発表されることは前から告知いただいていましたが、当日になって少し面食らう事態となりました。不慣れな環境でのセッティングに四苦八苦する中、支援者の方から耳に痛くもありがたいご指摘を頂戴してしまう一幕もありましたが、最終的には何とか及第点をとれる「店舗設営」ができたかなと思います。しかし、いずれにしてもブースづくりにおいてごたごたしてしまったのは事実であり、この点は次回以降に向けての反省点としていく考えです。

 そんなしくじりもあった中、最終的には2016年の立ち上げ以降最高の結果を残すことができました。Basbaloシリーズは75冊中74冊を販売し、オランダ・ベルギー編の1冊を残してほぼ完売という結果に。現行の表紙に変更してから抱えた在庫をほぼ全て売り払ったため、オンラインストアでの「東京野球ブックフェア出展記念セール」のような企画が打てなくなるという、嬉しい誤算となりました。なお、現在は電子版についてはフランス編を含めて全作品とも取り扱っていますので、ご興味ありましたら是非そちらをよろしくお願いいたします。

 今回は同時開催されたトークライブなども大盛況だったようで、会場にいてもイベント全体の熱気を肌で感じました。今年は例年にもましてとても楽しい経験ができましたし、今回他の出展者の皆さんとご一緒することができて本当に良かったと心から感じています。来年もご縁があれば是非参加させていただきたいと考えていますし、現在早くも今後を見据えたシリーズ全体のアップデートも計画し始めているところです。

 私たちNO BORDERZ BASEBALLは、これからもメンバー一同日欧両球界の懸け橋となるべく様々な活動を続けていきますので、引き続き温かいご支援をよろしくお願いいたします。私たちの作品を手に取っていただいた皆さん、よろしければ是非ブログのコメント欄などで感想教えてくださいね!
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「もう1つの野球界」の行方(後篇)

 日本が女子野球の世界において覇権を手にできているのは、単に代表チームの完成度が素晴らしく高いということだけが理由ではない。他国と比べた時の最大のアドバンテージは、やはり確立されたプロリーグが存在するということだろう。最大のライバルと言えるアメリカですら、調べた限り女子プロ野球リーグは残念ながら現存しない(かつては複数のリーグが立ち上がっては消えていったようだが)。つまり、女子がプロ野球選手になれる環境というのは2018年現在、世界広しといえども我が国にしかないということだ。この絶対的アドバンテージを生かさないわけにはいかない。

 男子野球の世界では、言うまでもなく世界最高峰はMLBを擁するアメリカとカナダだ。もちろん、女子と比べればプロ野球リーグは各国において広く定着こそしているものの、それでも独自に予算を組んで新興国にアカデミーや球場を建設し、新たな選手供給源を生み出し続けているMLBに太刀打ちできる組織は存在しないし、おそらく今後も当分は出現することはないだろう。残念ながら、MLBに続く世界第2位のプロ野球リーグと言えるNPBでさえも、彼らと肩を並べる存在とまでは呼べない。

 そして女子野球界におけるJWBLの立ち位置も、ある種これと似たところがあると言えるだろう。もちろんこれはあくまでも相対的な話であって、JWBLがMLBと全く同じような剛腕ぶりを発揮して、国際的に女子野球を広めていく活動を手掛けられるとまでは流石に思わない。だが、競技環境的にも実力的にも女王と呼んで差し支えない地位に今の日本はいるのだ。ならばこの優位を生かして、「日本を女子野球界のハブ(拠点、中枢)として確立していく」ための事業展開というのは検討する価値はあるのではないだろうか。

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(©Simone Amaduzzi)

 一つの案として挙げられるのが、日本行きを志す外国人選手を対象とする国際トライアウトの実施だ。現在、日本で女子プロ野球選手として活動するためにはトライアウトに合格することが必要だが、これの開催地を徐々に国内だけではなく海外にも広げていく。JWBL側にとっては、準備の段階で海外の関係者とのパイプを深化させることにつながるし、受験者側はプロ入りまでにかかる各種コスト(往復の航空券代や宿泊費など)を節約できる。既に、こうした国際トライアウトは男子の独立リーグでは行われており、2014年にはSan Diego Sports Authority社が地元サンディエゴで開催するに至っている。

 こうした先行事例は、国内では新興の組織同士積極的に情報共有を進めて、自身にも取り入れていくべきだ。もちろん、国内トライアウトにおいて外国人選手の受験を制限することは、たとえ国際トライアウトが実現したとしても必要はないだろう。実際に合格できるか否かは本人の才能と努力次第、挑戦を希望する者に対してはあくまでも間口は広く開けておく、というのが健全なありかたであると考える。女子プロ野球選手は男子と違って個人事業主ではない(株式会社わかさ生活の正社員という立ち位置)為、雇用するにあたっての細かな部分での調整は当然必要となるだろうが、既に外国人選手そのものは在籍歴があるので、大きな障害にはならないと言えるのではないだろうか。

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(©Simone Amaduzzi)

 だがいくら間口を広くとったからと言って、挑戦しに来る選手たちがJWBLの求めるプレー水準に達しない者ばかりであるなら、それは骨折り損のくたびれ儲けと言える。最も大事なのはやはり各国の底上げであり、女子野球そのものの競技レベルの向上だ。前篇からの繰り返しになるが、女子日本代表のW杯26連勝は言うまでもなく素晴らしい記録だ。それがもし、より多くの国に優勝のチャンスがあると呼べるくらい熾烈な競争の中で成し遂げられたものであるなら、その価値はより高まるというものだろう。そしてそれを支えるのは、やはり各国に存在する女子野球界の力だと言える。新興国への普及や交流を積極的に推し進め、女子野球界のリーダーとしての務めを果たしていくことも重要だ。

 例えば、今回のW杯に欧州勢として唯一参戦しているオランダ。男子球界でも既に欧州王者としての地位を揺るぎないものにしているが、この国と手を組んで女子野球の普及活動をともに進めていくことは、1つの選択肢として検討してもいいのではないだろうか。オランダは非英語圏の中でも英語の通用度が極めて高く、実務レベルに英語が話せる人材がいれば言葉で苦労することはない。既に国内では野球をプレーする環境がある程度整っているので、高い金を払って一から球場を立ち上げる必要もない。欧州の中では治安もかなり安定していてアジア人差別とも無縁、むしろ日本の野球人に対する期待度は物凄く高い国だ。日本がイニシアチブをとって野球普及のための活動をやりたいと言えば、大喜びで受け入れてくれる国の1つだと断言できる。

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(©Simone Amaduzzi)

 1つのアイデアとしては、日本からチームを現地に派遣してオランダ代表との親善試合を開催したり、野球教室を開いたりというPR活動を現地で行うというものがある(実は、フランスで男子の日本代表チームを招いて類似の企画をやりたいという声が上がっているが、もしかしたら女子代表をオランダに送る方が早く実現するかもしれない)。もちろんプロアマ混合の日本代表では、アマ側が社業や学業などの都合で渡欧できない可能性もあるので、ここはプロであるJWBLが全面的に前に出るべきだろう。オランダではかつて、現役大リーガーを招いての野球教室「ヨーロッパビッグリーグツアー」が開催されていたことがある。こうしたノウハウは是非遺産として活用すべきだ。

 こうした交流を続けていく中で、優れた才能の供給地を少しずつ確保していくことが日本にとっては重要だ。野球教室にたまたま参加したオランダの少女が、いつか成長してJWBLにおけるトップスターの1人となるかもしれない。その可能性を排除すべきではない。もし彼女が結果的に日本でプロにならなかったとしても、W杯で日本の前に立ちはだかるような選手に彼女が成長すれば、その存在は日本代表の選手たちにとっても、さらなる成長のためのモチベーションになる。お互いがより成長すれば、その分女子野球界は大きく活性化する。どちらに転んでも、女子野球の未来にとっては何も悪いことはないのだ。

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(©Simone Amaduzzi)

 忘れてはならないのは、こと欧州においては「女子ソフトボール界と敵対してはならない」ということだろう。特に野手のリクルートに関しては、女子野球と女子ソフトは必然的に真っ向から対立する存在になる。だが、大事なのは政治的な駆け引きなどではなく、あくまでも「選手が自らの意思でどちらを選ぶか、どちらのスポーツを好きになるか」だ。ある選手が自分の意志で「ソフトボールをやりたい」と決断したなら、それはそれでもちろん何も問題はない。野球人として大いに応援すべきである。だが、「本当は私も野球をやりたいのに、その選択肢がないから仕方なくソフトボールを選んだ」というなら、それはスポーツの在り方として健全ではないはずだ。

 大事なのは、野球とソフトどちらがスポーツとして優れているかということではない。「両方ある」ことこそ大事なのだ。もちろん、現状では女子ソフトのみが五輪種目であるという歪な状況である以上、両競技間の相互通行の道だって残しておくべきだろう。野球とソフトボールの協働は、今や世界レベルで進んでいる重要なムーブメントだ。それは異なる種目を志す同性同士であっても、同じことであるはずだと信じたい。

 男子野球においてもそうであるように、スポーツの世界的普及というのはもちろん口で言うほど簡単な作業ではない。実際に手掛けるとなれば多くの資金と時間が必要になるだろうし、多くの人を巻き込むことも欠かせないだろう(もちろん、その末席に我々NO BORDERZ BASEBALLも加えてもらえるなら光栄なことだ。いつでもご連絡お待ちしております)。だがそれでも、1人でも愛好者がいるならそれは見過ごしてはならない。たとえどこの国の人間であろうとも、同じスポーツを愛する仲間であることに変わりはないのだから。名実ともに女子野球界のリーダーである我が国が、世界の仲間と手を取り合ってともに前に進んでいけるかどうか、それこそが「もう1つの野球界の行方」を大きく左右するのである。

注・本投稿で使用している画像の諸権利は、撮影者であるシモーネ・アマドゥッツィ氏及びプロスポーツ・ビジュアルズ社に帰属します。無断転載等の侵害行為を禁じます。また、ブログ投稿の都合上実際よりも解像度を落とした画像を使用しております。




筆者紹介
田中亮多
NO BORDERZ BASEBALL代表。
1988年1月10日生まれ、千葉県出身。
幼少期に5年と3か月間にわたるイギリス・クロイドンでの生活を経験する。
帰国後の2009年に行われた第2回WBCにて、オランダ代表が優勝候補と謳われたドミニカ共和国代表に2連勝したことに衝撃を受けたことをきっかけに、ブログ「欧州野球狂の詩」を開設。
2016年に前身となる団体「グローバルベースボール」を旗揚げしその代表に就任、選手移籍支援など国際野球発展のための様々な活動に携わる。NPO法人国際野球支援団体ベースボールブリッジ前代表。

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「もう1つの野球界」の行方(前篇)

 「男と男のスポーツ」

 いつどこで誰がそう言い出したかはともかく、日本には野球をこのように評する言葉がある。そしてその是非は置くにしても、この言葉は確かに少なくともある一定の時代においては正しいものとして認知され、受け入れられてきたことは事実だろう。

 だが西暦2018年の今、そのセリフを大っぴらに口にすることは最早時代遅れと言ってもいいかもしれない。野球は既に、我々男の専有物などではなくなっている。「見るスポーツ」としてはもちろん、「するスポーツ」としてもだ。2009年の日本女子プロ野球機構(JWBL)誕生を直接的なきっかけとして、それまでも細々とではありながらも存続し続けてきた日本女子野球のコミュニティは、加速度的に拡大と発展を遂げるようになった。

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(©Simone Amaduzzi)

 各地の高校には続々と女子硬式野球部が誕生し、男子球界では管轄の違いから今なお実現していない「野球版皇后杯(プロアマ混合による日本一決定戦)」もスタート。頂点をなすJWBLは現在4チームを傘下に抱え、かつては関西一極集中だったのが関東や東北にも球団を持つようになっている。また女子野球を題材とするコンテンツも増え、漫画「花鈴のマウンド」やスマホゲーム「八月のシンデレラナイン」など、広く社会的な知名度を持つ作品も出てきた。

 そして、女子野球の隆盛は何も日本国内に限った話ではない。少しずつではあるが、世界にもその波は広がりつつあるのだ。現在、アメリカ・フロリダ州で開催されている第8回WBSC女子ワールドカップは、まさにその象徴的なイベントと言えるだろう。この大会では、日本代表は第3回大会から前回の7回大会まで5連覇を達成し、27日のオーストラリア戦での勝利で大会における連勝記録を26にまで伸ばしている。もちろん、それ自体も大いに称賛に値するものであることは言うまでもないが、この女子W杯における注目すべき点は決してそこだけではない。

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(©Simone Amaduzzi)

 第7回からの大きな変更点として挙げられるのが、参加国枠の増加だ。それまで8チームで争われていたのが、この措置によって前回からは参加国が12に増えた。今大会には、ドミニカ共和国とプエルトリコが初めて参戦。男子では言わずと知れた世界的強豪国であるこの両者だが、女子野球界ではまだまだ新参者に過ぎない。そんな両国は、既に一次ラウンドでは複数の白星をマークしている(プエルトリコは台湾、オランダ、韓国に勝利。ドミニカはオーストラリアと香港を破っている)。WBSCからすれば、この両国の健闘は何よりも嬉しいニュースと言えるかもしれない。

 いかなるスポーツにとっても、重要なのは「新しく競技を志す者にとっての選択肢の1つたること」だ。学生時代に部活動の合同勧誘会を見たことがある人なら、それが何を意味するかはイメージしやすいかもしれない。結果的に各個人がどれを選ぶかは別として、魅力的な選択肢の1つとしてのコミュニティを構築すること。そしてもしも実際にアスリートたちに選ばれた際には、彼ら・彼女らがその選択を悔いることなく、競技に打ち込み続けられるような環境を維持し続けること。今までは残念ながら日陰者であり続けてきた女子野球界が、少しずつではあれより多くの国でそれを実現できるようになり始めているのなら、それは大いに喜ばしいことだ。

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(©Simone Amaduzzi)

 ただ、もちろん現在の女子野球界が競技者の目から見ても理想的な状況にあるか、といえばそれはNOだろう。女子野球はそもそも非五輪種目ということもあり、まともにプレーしている国の数自体がまだまだ少ない。通称「マドンナジャパン」のW杯26連勝はとてつもない偉業であることは確かだが、裏を返せば競技としての選手層が薄いということでもある。現在WBSCに加盟しているのは122か国に上るが、ランキングの算出に必要なポイントを獲得できている国は、女子野球カテゴリーでは2018年8月現在でまだ12しかない。前述のドミニカとプエルトリコは、これまでポイントが一切記録されていなかった110か国のうちの2か国なのだ。

 国際大会が事実上W杯一択という事情もあってか、ポイントを保有している国の間でも実力的な格差は大きい。現在世界ランキング首位の日本が2000ポイントを獲得しているのに対し、最も少ない12位のパキスタンはたった100ポイント。4桁以上のポイントを保有している国は男子の15か国に対し、女子では日本、カナダ、アメリカ、オーストラリアの4か国しかない。男子では強豪国として認知されている国でも、女子ではまだまだ発展途上な国が多いのは間違いなく、この4強を脅かす国が現れるまでにはいましばらく時間がかかるだろう。

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(©Simone Amaduzzi)

 そしてもう1つの課題が、何よりも五輪種目である女子ソフトボールとのすみ分けと共存だ。野球とソフトボールは往々にして対の関係で語られることが多く、それが冒頭の言葉の1つの根拠にもなっているわけだが、この両者は兄妹関係にはあれどあくまでも別のスポーツであることを忘れてはならない。いくら両者が同じロマンス語に属し、発祥国同士の物理的距離も近く、会話した時の音韻構造や語句だって似ている(そして、実は工夫次第ではお互いにある程度通じ合えてしまう)からと言って、イタリア語をスペイン語の一方言として認識する人は普通いないはずだ。同じように、野球とソフトボールは基本的な構造こそ同じくしていても技術面やルールの一部に大きな相違がある。女子野球と女子ソフトボールは、原則的には違う枠組みとして認識されるべきだ。

 だが実際には、そのゲームの構造が基本的に同一であるがゆえに女子野球と女子ソフトは競合関係となることが多い。そしてたいていの場合、前述のとおり五輪では実施されない野球の方が圧倒的に劣勢である。例えば、今回のW杯には欧州から唯一オランダが参戦しているが、そもそも女子野球文化がまともに存在するのはかの国だけであり、そしてオランダにおいてさえ女子野球はまだ始まったばかりのスポーツに過ぎない。何故なら、欧州では既に「男子は野球、女子はソフトボール」というすみ分けが完全に確立されてしまっていて、女子野球のコミュニティ自体がそもそも成り立っていないからだ。フランスからはメリッサ・メイユーという優れた才能が輩出されたが、あれはまさに例外中の例外とも呼ぶべきものである。

 そして現在の絶対的女王たる日本でも、状況が好転してきているとはいえ男子野球と比べればまだまだ、相対的な地位は高いとは言えないだろう。同じ日本のプロ野球、そして我が国野球界の最高峰に位置するリーグ同士でありながら、NPBとJWBLはスポーツ報道という面でも完全に同格と呼ぶには程遠い。世界一の女子野球大国にあってさえも、越えなければならない課題は少なからず存在するのだ。では、このような女子野球界の現状をより良いものにしていくためには、どんな取り組みが必要だろうか。それは後篇で詳しく触れることとしたい。

注・本投稿で使用している画像の諸権利は、撮影者であるシモーネ・アマドゥッツィ氏及びプロスポーツ・ビジュアルズ社に帰属します。無断転載等の侵害行為を禁じます。また、ブログ投稿の都合上実際よりも解像度を落とした画像を使用しております。

10年後へのバトン~パリとロサンゼルスを見据えて~

 2020年東京五輪・パラリンピックの開催が決まった、2013年からはや5年。
2年後の開幕を見据えて、メディア上でも大会に関する報道の量がだいぶ増えてきた印象があります。

 とはいえ、そこで伝えられる内容に対しては必ずしも好意的な反応ばかりでないこともまた事実。
確かに、大会ボランティアの登用をめぐる問題や大会期間中における酷暑対策など、
報道を通じて伝わってくる情報や実行委員会の決定には、
個人的にも首を傾げたくなるような内容のものも多々あることは否定できません。
個別の論点については割愛しますが、いずれにせよこうした部分への疑義が積み重なっていることによって、
東京大会の開催を待ち望む空気が今一つ盛り上がってきていない面があるのは間違いないかと思います。

 ところで、現在ほとんど語られることがないので陰に隠れがちではありますが、
五輪・パラリンピックについては忘れてはならないことがあります。
それは、「夏季大会の開催は2020年が最後ではない」ということ。
特に、開催地提案の競技として復活した野球・ソフトボールについては、
東京五輪はむしろ「再起動の起点」にすぎません。

現在の野球・ソフトボール界にとって大事なことは、
予選ラウンドも含めて東京大会を成功裏に終わらせるのはもちろん、
その後に控える2024年パリ五輪・2028年ロサンゼルス五輪において、
いかにして競技存続を図っていくかという点でもある
のです。

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 長年の悲願でもあった復活を遂げた野球とソフトボールですが、
開催年度を問わず固定的に開催される25の「中核競技」の一角を占めているわけではありません。
東京以降も五輪競技として継続実施していくためには、
同様に開催地によって実施が提案される「その他の競技」に残り続ける必要があるのです。
そしてこの点を考えた時、東京とは異なり五輪競技を開催するにふさわしい野球場が存在しない、
パリ大会における両競技の継続実施の実現は、
かなり難度が高く世界中の関係者が一丸となって取り組むべき課題と考えられます。

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 一方2028年のロサンゼルス大会については、
MLB球団を2つ抱えるうえに周辺のマイナーリーグ球団の本拠地も会場の代替案として考慮しうることを考えれば、
東京大会同様インフラ面でのハードルは確かに低いでしょう。
しかし、日本以上に「五輪野球での金メダル獲得」に意義を見出しづらいお国柄であることなどを考慮すれば、
仮にパリで実施競技から落選した時の「再び0から五輪にねじ込む」という作業は、
思ったほど簡単なことではないかもしれません。
今必要なのは東京を起点に野球新興地域のパリを経由して、
野球の母国アメリカへとバトンをつなぐという作業であり、
これはまさに10年越しの超国家的巨大プロジェクトなのです。


 五輪競技としての野球・ソフトボール存続が重要である理由は、
それ自体が各国政府が野球・ソフトボール連盟に対する強化予算として、
補助金を重点拠出する根拠であるからです。

既に野球超大国として、
競技インフラや育成システムが確立されている我が国とは異なり、
新興国では多くの場合こうした部分の整備が資金難を理由として追いついていないことが多々あります。
少しでも潤沢な予算によって新興国がその競技レベルを向上し、
五輪やその予選はもちろんWBCやプレミア12といった大会でも存在感を増していくこと。
これは野球・ソフトボールという競技そのものがより競争に厚みを増して、
今後永続的に発展を遂げていくためにも絶対に必要なこと
だと考えます。

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 我々NO BORDERZ BASEBALLは、
今年から2028年ロサンゼルス五輪・パラリンピックまでの10年間、
その中でも特に2024年パリ五輪・オリンピックまでの6年間を何よりも重要なピリオドと位置付けており、
東京五輪・パラリンピックの先を見据えて様々な事業活動に取り組んでいく予定としております。
先般契約が決まり、現在鋭意準備を進めているルーアン・ハスキーズの球団グッズ販売についても、
その一環として位置付けていきます。

またハスキーズ球団とは、
より直接的に五輪につながっていくであろうインフラ整備の面でもお互いに協力して動いていく旨合意しており、
この点についても可能な限り力を発揮していきたいと思います。

 もうすぐ熱い8月が、そして全国の高校野球ファンにとっての「100回目の夏」がやってきます。
今年も大舞台で熱戦を見せてくれるであろう彼らの中から6年後、
あるいは10年後にオリンピアンが誕生するかどうか。

熱気と浜風の向こう側にある「近くて遠い未来」に、少し思いを馳せてみませんか?




筆者紹介
田中亮多
NO BORDERZ BASEBALL代表。
1988年1月10日生まれ、千葉県出身。
幼少期に5年と3か月間にわたるイギリス・クロイドンでの生活を経験する。
帰国後の2009年に行われた第2回WBCにて、オランダ代表が優勝候補と謳われたドミニカ共和国代表に2連勝したことに衝撃を受けたことをきっかけに、ブログ「欧州野球狂の詩」を開設。
2016年に前身となる団体「グローバルベースボール」を旗揚げしその代表に就任、選手移籍支援など国際野球発展のための様々な活動に携わる。NPO法人国際野球支援団体ベースボールブリッジ前代表。

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NO BORDERZ BASEBALLって何だ?

どうもみなさんこんにちは、ようやく日本での生活も落ち着きを取り戻してきた仁木谷です。

ご存知の方も多いかとは思いますが数日前、団体公式のTwitterアカウントが凍結の憂き目にあってしまいました・・・

というのも、団体の結成2周年を記念して誕生日設定を弄ってみたところ、

2歳児と無事認定されてしまい「13歳以下のアカウント作成」というルールを侵害する形となってしまったようです。

代表の田中が即座に誤って登録した旨を身分証画像を添付したうえでTwitter社へと伝え、異議を申し立てたのですが音沙汰なし・・・

復旧の見通しが立たないため現在は新アカウント(@NO_BORDERZ_jp)へと移行という処置を取らせていただいています。

多くの方々に多大なるご心配とご迷惑をおかけしたことをお詫びするとともに、

大変お手数ではありますが新アカウントの方も是非フォローしていただければと心よりお願い申し上げます。

欧州視察中に順調にフォロワーが増え続け、
ちょうど400人を超えていた矢先の出来事だっただけに私たちとしても痛恨のミスでした・・・汗



ともかくTwitterアカウントが全くの白紙になってしまったのはある意味ではいい機会だ、

ということで改めてNO BORDERZという団体はいったい何をしているのか?

またこれからどんなビジョンを描いているのか?

といったことをメンバーと合わせて紹介させていただきました。

今回のブログ記事の内容は、その投稿を加筆・再編集したものです。

「よくわからない事をしている怪しい国際野球サークル」である私たちのことを少しでも知っていただければ幸いです。




執筆・編集:仁木谷 宏泰

※この記事はTwitter団体公式アカウントへの投稿を再編集したものです。


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Author:no_borderz_baseball
私たちNO BORDERZ BASEBALLは、「野球を世界的に盛り上げる」為に何が必要かをそれぞれが考え、行動する者たちの集まりです。

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